吉田篤弘さんの小説は旅する感じに似ています。
あえて行き先のわからないバスに乗るようなカンジ・・
1986年の冬の中にあった音楽をめぐる この物語は
スノードームの中で舞う雪のように静かで やさしく、
徐々に空気が濃くなっていきます。
拍手もほとんどない中、その二人組は登場した。
ひとりはギターを弾きながら歌い、もうひとりは黙々と
ダブル・ベースを弾きつづけた。
二人とも男の子みたいな女の子だった。
ひとたび存在したものは誰かの中で生きつづけ、
ときどき思い出したように、消えゆくものを奏でます。
行間から音楽が聴こえてきそうな余韻の残る物語でした。